フラックスとは、はんだ付けや金属のロウ付けするときに使用するはんだ付け促進剤です。はんだ付けというとコテとはんだが主役のイメージを持たれていますが、フラックスが下準備をすることで母材にはんだがよくぬれて接合しています。上手なはんだ付けをするには、フラックスを使いこなす必要があります。
仕事や趣味ではんだ付けをしている人の中にはフラックスを使ったことがない方もいるかもしれません。よく熱したコテではんだを溶かせば基板上に接合しているのを見ると、フラックスなんて不要だと思うのではないでしょうか。しかし、それははんだの芯部分にあらかじめフラックスが入っているためです。ヤニなしはんだや、はんだの修正をしたいときにはフラックスが欠かせません。
太洋電機産業や白光といったメーカーから販売されている製品を見ると、電子部品用・ステンレス用などの区分けがされています。フラックスを選ぶ前に、その特徴を詳しく知っておきましょう。フラックスの選び方とおすすめの商品をご紹介します。
フラックスの役割
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フラックスと一口に言っても、電子回路のはんだ付けに用いるタイプと板金のロウ付けに使用するタイプとでは、成分や使い方に違いが見られます。しかし、フラックスに期待できる効果自体はほぼ同じで、3つの役割があります。
1つ目は母材表面の洗浄です。はんだ付けに使われるプリント基板の銅には酸化被膜や汚れが付着しています。このような不純物があるとはんだが綺麗にのりません。フラックスを母材表面に塗ることで、成分中の活性剤が酸化被膜を取り除き、汚れを洗浄してはんだがぬれやすくしています。
2つ目は、はんだの表面張力を低下させる役割です。はんだは溶けた状態での表面張力が強く、そのままでは丸くイモはんだの状態になってしまいます。フラックスにははんだの表面張力を弱くする効果があり、母材表面をはんだが流れやすくすることで、平らなはんだ付けが可能となります。
最後の役割は、はんだの酸化防止です。はんだはスズ・鉛などの金属からできていますから、はんだ付けをしている間も少しずつ錆びてしまいます。はがれにくいはんだ付けができるのは、フラックスがはんだの酸化膜を除去しているからこそです。
フラックスの選び方
フラックスを選ぶときには、まず母材に合った種類を探しましょう。フラックスははんだ付け・ロウ付けといった用途によって適した基材が異なり、活性剤の強さによっても扱い方が異なります。
基材から選ぶ
フラックスは主成分となっている基材によって樹脂系・有機酸系・無機酸系の3つに分けられます。どのような用途で使うかによって適した種類が異なるため、基材ごとの特徴をつかんでおきましょう。
電子部品のはんだ付けに向いた樹脂系
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電子部品のプリント基板では、配線を形成している銅箔に侵食が起こらないよう、活性作用の弱い樹脂系フラックスが向いています。松脂に代表されるロジン、ロジンを溶かすための有機溶剤、活性作用をもたらす活性剤が主な成分です。
一般的に販売されている樹脂系フラックスは弱い活性剤を使用しているため、洗浄はしなくてもよいとされています。ただし、RAタイプと呼ばれる活性ロジン系のフラックスは洗浄が必要です。
金属のロウ付けに向いた有機酸系
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有機酸を水または水溶性アルコールに溶かして融剤として使用しているのが、有機酸系の水溶性フラックスです。樹脂系よりも活性作用が強く、ロウ付けでの母材である金属表面をしっかり洗浄できます。侵食作用も強いものの、水溶性なのでフラックス残滓は水洗いできるのが特徴です。
活性力が強いステンレス用の無機酸系
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ステンレスの酸化被膜は強く安定しているため、通常のフラックスでは十分に除去できません。無機酸系のフラックスは、劇物である塩化亜鉛などの無機物を水に溶かし、ステンレスのロウ付けにも使える強い活性力を持っています。使用後は母材への侵食を防ぐために洗浄が必須です。
樹脂系フラックスの種類から選ぶ
電子基板に使用する樹脂系フラックスの種類は、活性剤が含まれているかどうかで分けられます。活性剤含有量の少ない順から、非活性ロジンタイプ・弱活性ロジンタイプ・活性ロジンタイプの3つです。なお、アメリカ軍のMIL規格にあわせて順にR・RMA・RAとも呼称されますが、規格に準じていない製品もあるため、ここではMIL規格では分類しません。
母材の腐食がない非活性ロジン
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活性剤をほとんど含まないフラックスです。ほとんど樹脂そのものの製品ですから母材への侵食の心配がなく、はんだ付け後にフラックスを洗浄する必要がありません。
ただ、活性剤は母材表面の洗浄・はんだの酸化防止を果たしている成分なので、非活性ロジンタイプではそれらの効果があまり見込めない欠点を持っています。金属加工のろう付けでは使いにくいタイプです。
広く使用されている弱活性ロジン
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成分中に塩素・臭素・フッ素・ヨウ素などハロゲン元素による活性剤を含んでいます。活性作用による母材の洗浄・はんだの酸化防止をある程度期待でき、それでいて侵食作用はそこまで強くないため、使いやすいタイプです。一般的なはんだ付けでよく使用されています。
はんだ付け後には洗浄しなくてもよいとされています。専用洗浄剤の使用がためらわれるケースでは、この弱活性ロジンタイプを使いましょう。
活性作用が強い活性ロジン
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活性剤を一定量含んだタイプで、フラックス入りハンダに使用されています。母材の洗浄作用などに強い効果が見られますが、それ以上に金属析出が懸念されるため、液状容器ではあまり販売されていません。活性剤が強いため、使用後は洗浄が必須です。
容器から選ぶ
フラックスの容器形状はキャップ付きボトル・クリーム容器・点滴ボトルの3種類が見られます。
キャップ付きボトル
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樹脂系から無機酸系まで幅広く使われている容器で、ボトル内に液状のフラックスが入っています。キャップ側は大抵ハケになっていて、基板上のハンダ付けをしたい箇所に塗りやすいのが特徴です。ハケにフラックス液をたっぷりと含んでいると点々とこぼれてしまうので、容器の口で軽く払うようにしてください。
クリーム容器
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主に樹脂系の非活性・弱活性ロジンや、銀ロウ付け用のペースト状フラックスに使われています。フラックスは人体によくない成分が多いので、使うときには細い棒の先にとって塗布していくようにしましょう。口が大きい分だけ劣化しやすいため、使ったらフタをしっかりしめて早めに使いきってください。
点滴ボトル
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キャップをあけてフラックス液を滴下できるタイプです。片手で使えるため便利ですが、正確に液を落とすのは難しく、プリント基板には向いていません。広い範囲を一度に塗る必要があるロウ付け用のフラックス容器として使われています。
電子回路はんだ付け用フラックスのおすすめ人気ランキング7選
フラックスは、どの母材にはんだ付けをするかによって選ぶべき種類が異なります。ここでは電子回路のはんだ付け促進剤として適した製品を7個ピックアップしました。
1位 HOZAN フラックス H-722

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:キャップ付きボトル
鉛フリーはんだに対応した製品
工具類を中心に販売するホーザン製のフラックスです。ハケつきキャップなので母材に塗りやすく、活性力も期待できます。鉛フリーはんだにも使えるため、幅広い作業に使えるでしょう。
2位 ホーザン フラックス H-728

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:キャップ付きボトル
ハロゲンフリーでフラックス残滓が少ない
こちらもRMAと表記されていますが、ハロゲンフリーなのではんだ付け後の残滓が出にくくなっています。ただし活性力はH-722よりも弱めで、鉛フリーはんだとの相性もあまりよくありません。
3位 白光 電子用フラックス No.001-01

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:キャップ付きボトル
電子部品に塗りやすいフラックス
はんだ付け製品を展開している白光の電子部品用フラックスです。キャップはハケつきなのでフラックスを塗りやすくなっています。なお、メーカーからは経年変化を避けるために必ず洗浄するようにと注意喚起がされています。
4位 白光 フラックス FS-200

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:キャップ付きボトル
高温で活性するため手はんだ作業に最適
高温で活性しやすい特殊なロジンを使用している製品です。手はんだ付けでは母材を急加熱することになるため、高温活性のこの製品は使いやすいのではないでしょうか。また、ぬれにくい鉛フリハンダーでも広がりやすいことを試験で実証しています。
5位 goot 電気用フラックス BS-55

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:点滴ボトル
電気部品のはんだ付け用促進剤
はんだ関連製品を幅広く開発する太洋電機産業の製品です。活性剤濃度が低いため、母材侵食の心配があまりありません。点滴ボトルなので滴下場所には注意して使用してください。
6位 goot プリント基板フラックス BS-75B

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基材:樹脂系
種類:弱活性ロジン
容器:キャップ付きボトル
精密機器に使いやすい無洗浄タイプ
ICチップなどの部品を搭載したプリント基板に使いやすいフラックスです。塩素含有量が0%なので、フラックス残滓による母材への侵食が起こりにくくなっています。洗浄をしなくてもよいため、洗浄液を使用したくない作業に使いましょう。
7位 非腐食性半固形フラックス Soldering Paste NF-19Rはんだペースト

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基材:樹脂系
種類:非活性ロジン
容器:クリーム容器
非活性・非腐食性の固形フラックス
非活性タイプで、珍しいペーストタイプの製品です。phは中性なので母材を傷めることがなく、洗浄の必要がありません。高温になると液状化するので、冷暗所に保管しておきましょう。
金属ロウ付け用フラックスのおすすめ人気ランキング3選
樹脂系では難しい金属・ステンレスのロウ付けに使えるフラックスを3つご紹介します。
1位 goot 板金用フラックスセット BS-3A

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基材:無機酸系
容器:点滴ボトル
活性力が強いため板金加工に使いやすい
銅や真鍮など板金のはんだ付けに使えるフラックスと鉛入りはんだのセットです。フラックスは活性作用が強い塩化亜鉛を使用しており、母材表面の酸化膜をしっかり除去できます。
2位 goot ステンレス用フラックスセット BS-4A

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基材:無機酸系
容器:点滴ボトル
ステンレスのロウ付けができるはんだセット
ステンレスのはんだ付けがしやすいフラックスとはんだのセット商品です。フラックスは強酸性なので、使用後はよく洗浄してください。水溶性なので水洗いすればフラックス残滓は落ちます。
3位 白光 サスゾールFセット ステンレス用フラックス

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基材:無機酸系
容器:点滴ボトル
母材にあわせて水で薄める原液タイプ
白光のステンレス用フラックスで、塩化亜鉛を35~45%含んでいます。ステンレス・鉄・真鍮鋳物などには原液のまま、銅・真鍮板・ブリキ・トタンには水で5倍に薄めて使ってください。なお、付属のはんだは鉛入りで径1.6mm・長さ1mです。
おすすめの商品一覧
製品 | 最安値 | 評価 | リンク |
---|---|---|---|
![]() HOZAN フラックス H-722
1
|
302円 |
4.4 |
|
![]() ホーザン フラックス H-728
2
|
329円 |
4 |
|
![]() 白光 電子用フラックス No.001-01
3
|
346円 |
|
|
![]() 白光 フラックス FS-200
4
|
467円 |
4.1 |
|
![]() goot 電気用フラックス BS-55
5
|
250円 |
|
|
![]() goot プリント基板フラックス BS-75B
6
|
284円 |
|
|
![]() 非腐食性半固形フラックス Solderi……
7
|
160円 |
3.77 |
|
![]() goot 板金用フラックスセット BS-3A
8
|
469円 |
|
|
![]() goot ステンレス用フラックスセッ……
9
|
494円 |
|
|
![]() 白光 サスゾールFセット ステンレ……
10
|
386円 |
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樹脂系フラックスの洗浄方法には洗浄剤を使う
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フラックスを使用してはんだ付けが終わったあと、基板表面には透明に固まったフラックスが残っています。樹脂系の非活性・弱活性タイプは基板への侵食性が少なく、絶縁性も高いためそのままでも良いのですが、後々の動作不良を少なくしたいならフラックス残滓を洗浄剤で除去しておきましょう。
フラックスの洗浄方法では、専用の洗浄剤を使うようにしてください。アルコール分があれば除去できるものの、水分が多いアルコール洗浄剤を使用するとはんだや基板のサビに繋がります。フラックス除去専用の洗浄剤は高純度のアルコールと添加物でできているので、母材劣化には繋がりません。
まとめ
フラックスははんだ付け・ロウ付け用に使われるものなので、まずはどういった用途で使うのかを考えて選びましょう。電子回路へのはんだ付けであれば樹脂系、板金・ステンレスのロウ付けなら有機酸系か無機酸系が適しています。
はんだ付けで使用する樹脂系フラックスは、活性剤の強さによって非活性・弱活性・活性の3種類に分類されます。活性作用が強ければ酸化被膜を除去しやすいものの、母材に腐食が起こりやすいため洗浄は必須です。洗浄をしなくてもよい弱活性タイプの製品は人気があり、商品数も多く販売されています。
なお、フラックスは有害な成分が多いため、取扱いには注意してください。素手で触らないためにゴム手袋をするのはもちろん、加熱しすぎたときに出る煙を吸収しないようにゴーグル・マスクの着用もおすすめです。溶接母材に合った製品を選び、安全にはんだ付けを行いましょう。