電気回路から電流が漏れ出ていないかを検査するために用いられる絶縁抵抗計。一定電圧を流すことで絶縁抵抗を見る原理の道具で、メガーテスターや電気抵抗計とも呼ばれます。
共立や横河など計器メーカーから製品が販売されていて、漏電修理時の修理箇所チェック・保守点検などに必須の測定器具です。
回路からの漏電はショートによる停電だけでなく、感電や火災にも繋がります。これらの災害を防ぐためには、絶縁抵抗計でのチェックが欠かせません。表示形式や使い方など絶縁抵抗計の特徴を把握して、使いやすいものを選びましょう。
絶縁抵抗計とは
電気回路である配線には絶縁処理が施されているものですが、経年劣化やアクシデントによって絶縁機能が弱くなり、漏電を起こすことがあります。絶縁抵抗計は漏電の可能性を知るために最適な計測器具です。
絶縁抵抗計で計測すると、回路の絶縁抵抗がMΩ(メガオーム)という単位で表示されます。この数値が高いほど絶縁抵抗は大きい、つまり良く絶縁されているということです。逆に低いと絶縁抵抗が小さいと表現され、漏電の生じる可能性が高くなります。
絶縁抵抗計の原理
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絶縁抵抗を測定するときには、電気回路の主電源を落とします。この状態で絶縁抵抗計の測定用リードを回路のアース線に繋ぎ、負荷をかける側のリードは測定対象の端子に接触させて電圧をかけます。あとは絶縁抵抗計の表示を読み取れば計測終了です。
アース線は回路の漏れ電流を逃がす役割を持ちますから、この線に電流が流れない状態なら絶縁抵抗は良好です。逆に多く流れれば絶縁不良と判断できます。
電気回路の絶縁抵抗を計測するというと難解に聞こえますが、このように原理自体は難しくありません。水で例えるなら、ホースに水流を通して周りが濡れないかを確かめる検査です。
接地抵抗計との違い
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絶縁抵抗計と機器の見た目・名称が似ているものに接地抵抗計がありますが、この2つには明確な違いがあります。
まず、本体が出力する電流が絶縁抵抗計は直流、接地抵抗計は交流という点です。直流は電圧を一定にできて精密な検査が可能ですから、僅かな電流から絶縁抵抗を知るには絶縁抵抗が向いています。
次に測定対象物の違いです。接地抵抗計は、アース線から地面に流れる電流を計測する測定器具です。漏電が起きたときにはアース線を通して地面へと逃がしますから、アース線から地面へと電流が流れやすい、つまり接地抵抗が小さいほど万が一の時にも安全なワケです。
測定対象物が違いますから、表示される数字の意味も異なります。絶縁抵抗計では表示される数値が高ければ良好、接地抵抗計では表示される数値が低ければ良好です。
絶縁抵抗計の選び方
絶縁抵抗計は対象物に一定電圧を流して絶縁性能を測定する器具なので、対象物にあわせた電圧を流す必要があります。まず選ぶポイントは定格測定電圧のレンジです。
その次に、自分にとって見やすい表示形式のものを選択しましょう。
定格測定電圧の数で選ぶ
絶縁抵抗は、定格測定電圧とよばれる特定の電圧をかけて測定します。この定格測定電圧は対象となる回路によって適したものが決まっていますから、適合する電圧のものを選ばなくてはいけません。
絶縁抵抗計の種類には1つの定格測定電圧のみの単レンジ、2つ以上の定格測定電圧を設定できる多レンジがあります。それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。
特定の回路の測定に便利な単レンジ
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単レンジ・1レンジの絶縁抵抗計は、1つの定格測定電圧のみ計測できます。多レンジより値段が安い場合が多いものの計測できる電圧幅は1つしかないため、測定対象物が決まっている場合に向いたタイプです。
測定のたびに設定をいじる必要がないため、特定の回路だけを見る保守点検に便利です。新築建物のチェックや修理業など、作業によって見る電気回路が変わるケースの測定には不向きなので、ややマイナーとなっています。
2つ以上の定格測定電圧を発生できる多レンジ
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定格測定電圧をダイヤルによって切り替えられるので多用途に使えて、各メーカーの商品展開でもメジャーなタイプです。2レンジの定格測定電圧を切り替えられるものから、多いものでは50~1000Vまでの5レンジ測定できる機器も見られます。
単レンジよりも機能を付けているため、価格帯は高価です。また、測定対象物によって電圧切替の設定が求められます。もし適合しない電圧で測定すると対象物の破損を招く可能性があるため、レンジが多いほど便利と単純に考えることはできません。
表示形式で選ぶ
絶縁抵抗計の表示盤は、針で数字を指し示すアナログ式と、数字を直接表示するデジタル式があります。この2種類は見やすさを念頭に置いて選びましょう。
針で表すアナログ式
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アナログ式はメーター上を針が振れて数字を指す、計器類でおなじみの形式です。絶縁抵抗計では針の初期位置が∞、逆端は0となっていて、この間を針が動いていきます。針があまり動かず∞に近ければ絶縁良好、0近くに動くほど絶縁不良の状態です。
アナログ式はプロ好みの仕様ですが、絶縁抵抗計本体の不調が分かりにくいことが難点です。針が動かないほど対象物の状態は良いので、何らかの問題で針が動きづらくても見過ごすケースもあります。正しく使うには抵抗計本体の状態チェックが欠かせません。
暗い場所で作業するケースが多い保守作業では、メーターの確認がしづらくなります。本体に発光・点灯機能があるタイプを選ぶと便利です。
数値で表すデジタル式
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デジタル式はディスプレイ上に抵抗値を表示する形式です。近年になって出てくるようになって、アナログ式に取って代わりつつあります。
メリットは、なんと言っても正確な抵抗値が分かることでしょう。アナログでは微細な針の振れで分かりづらいこともありましたが、デジタルは表示できる範囲ならしっかり数値を出してくれます。なお、最大値以上ではOF(オーバーフロー)や記号での表示です。
また、ディスプレイにLED・LCDを採用した機種が多く、数字を見やすくなっています。暗いところでも文字盤は明るく表示されるので、保守点検作業でも抵抗値の確認が容易です。
電源で選ぶ
絶縁抵抗計は電気を流して測定するものなので、電源を取り付ける必要があります。電源タイプは電池とAC電源の2種類です。
一般的な電池
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絶縁抵抗計は一般的な乾電池で動くタイプが主流です。単三・単四乾電池や積層電池を数本使用して、本体の動作と計測時に使用する電流にしています。
電源が電池なら持ち運びが簡単ですが、電池消耗によって十分な計測が行えないケースもあります。そのため、使用前には絶縁抵抗計のバッテリーチェックをしましょう。ほとんどの絶縁抵抗計にバッテリーチェック機能がついています。
AC電源
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AC電源タイプは、高圧絶縁抵抗計に採用されることがある電源形式です。コンセントに差したACアダプターから電気を取るので電源寿命による計測誤差が生じることはなく、電池よりも安定して計測できます。
もっとも、コンセントに繋いでいないと計測できないのは不便なので、電源取り口がAC電源のみの製品は少ない傾向です。大抵は充電式電池付きか、乾電池を取り付けて動くようになっています。
安全なオートディスチャージ機能付き
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絶縁抵抗は対象物の回路へ一定電圧で電気を流して計測しますが、計測終了後には回路内に充電された電気を放電しなければいけません。この時に便利なのがオートディスチャージ機能です。
この機能がついた絶縁抵抗計は、測定終了すると自動的に放電が開始されるようになっています。充電したまま対象物の電源を入れると故障に繋がりますから、自動放電される機能があれば安心です。
絶縁抵抗計おすすめ人気ランキング7選
絶縁抵抗計の販売傾向を見ると多レンジ・電池式がメジャーで、違いはレンジ定格測定電圧の幅と表示形式に集約されます。その中でもどのような商品が人気なのでしょうか。
ここからは高性能機器がひしめく絶縁抵抗計の中でも、多レンジ・電池式のおすすめ商品を7個ご紹介します。なお、マルチテスターと呼ばれる計測器具にも絶縁抵抗計測機能がありますが、こちらは小さな電圧しか発生できないため除外しています。
1位 日置電機 IR4051-10 5レンジ デジタル絶縁抵抗計

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重量:600g
定格測定電圧:50V / 125V / 250V / 500V / 1000V
最小表示:0.01MΩ
電源:単三電池4本
安価でありながら高性能!便利に使える絶縁抵抗計
4位の機器の廉価版で、見やすいディスプレイと5レンジ対応の本体機能はそのままに、絶縁抵抗計とケースが一体型になったモデルです。リードのLEDライトや500V・1000Vのリリースボタンも健在で、もちろんオートディスチャージ機能付きです。
本体には絶縁抵抗の基準値を設定できる機能がついていて、比較判定が行えます。基準値以下であれば警告音とディスプレイの赤色点灯で教えてくれるので、絶縁不良が簡単に視認できる便利機能です。
また、本体についている白いボタンは測定スイッチで、単発での測定なら都度押すだけですが、スイッチを起こすことで連続測定も可能です。1度の測定では終わらない作業の際に重宝します。
これだけの機能がついていて比較的安価なので、保守点検作業やメンテナンス技師の方に愛用されています。1台でいろいろな電路の絶縁抵抗を計測したい方に最適な製品です。
2位 共立電気計器 キューメグ 4レンジ絶縁抵抗計 KEW3441

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重量:430g
定格測定電圧:125V / 250V / 500V / 1000V
最小表示:0.2MΩ
電源:単三電池4本
豊富な機能により作業を楽にしてくれる
電気計測器具を多数展開している共立電気計器が開発した、4レンジ対応の絶縁抵抗計です。アナログ目盛りが大きく、また暗所になると照明が自動点灯します。
目盛り両端に付いているLEDは、抵抗状態によって色が変わります。高抵抗なら緑、低抵抗なら赤なので、抵抗良好・不良が一目で分かる機能です。活線警告機能とオートディスチャージ機能もあり、測定時の安全が考えられています。
測定用リードにはリモート測定用スイッチ・LED照明がついているので、作業が楽にこなせるでしょう。オートパワーOFFにより無駄な電池消耗も防いでくれます。
3位 SANWA アナログ絶縁抵抗計 PDM5219S

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重量:310g
定格測定電圧:125V / 250V / 500V
最小表示:0.02MΩ
電源:積層型9V乾電池1本
目盛りが統一されていて直感的に分かりやすい
アナログ式で多レンジだと、定格測定電圧ごとに最大抵抗値が違っていて目盛りの読み方が違うケースもありました。しかし、この製品は目盛りがシンプルで計測結果を読み取りやすいため、数値誤認を防げます。
また、オートディスチャージ機能を備えていて素早く放電を行ってくれます。CE規格やJIS C1302にも準拠しているので、使用の際にも安心できるのではないでしょうか。
首から掛けられるストラップが付属品で、測定時に両手を使いやすくなっています。アナログ式に不慣れな人でも使いやすい絶縁抵抗計です。
4位 日置電機 IR4052-10 絶縁抵抗計

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重量:440g
定格測定電圧:50V / 125V / 250V / 500V / 1000V
最小表示:0.01MΩ
電源:単三電池4本
安全な計測ができるよう配慮された機器
大きく数字が表示されるデジタルタイプで、計測結果を見やすくなっています。高輝度の白色LED・リードのLEDライトももちろん付属です。定格測定電圧は5レンジなので、屋内電路の絶縁抵抗測定なら不自由しないでしょう。
通常の屋内電路には適さない500V・1000Vの定格測定電圧を使用する際には、リリースボタンを押すようになっています。設定ミスで大きい電圧をかけて対象物を破損するケースを未然に防いでくれる工夫です。オートディスチャージ機能付きなので安全に測定を終えられます。
5位 日置電機 IR4031-10 絶縁抵抗計 3レンジ

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重量:420g
定格測定電圧:50V / 125V / 250V:定格測定電圧:50V / 125V / 250V
最小表示:0.05MΩ:最小表示:0.05MΩ
電源:単三電池4本
LED照明つきで暗い現場でも計測しやすい
シンプルなアナログ表示で、計測結果を読み取りやすくしている絶縁抵抗計です。メーターは白色LEDで光るようになっていて、暗所でも見やすいのが魅力です。測定開始スイッチのある赤いテストリードもLEDライト付きで、測定箇所を明るく照らしてくれます。
電池の残量をライトの色で3段階に示してくれるので、いざという時にも電池切れの心配なく安心して使っていただけます。
6位 三和電気計器 メグオームテスタ DG35a/C

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重量:160g
定格測定電圧:125V / 250V / 500V
最小表示:0.01MΩ
電源:単4電池2本
ポケットサイズで2つの機能をあわせ持つ1台
側面のリードにより絶縁抵抗を計り、背面のクランプを引き出すことで電流測定用のクランプメーターとして使えます。ポケットサイズなので電気設備のチェックに便利です。
7位 カイセ デジタル絶縁抵抗計 SK-3502

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重量:600g
定格測定電圧:125V / 250V / 500V / 1000V
最小表示:0.2MΩ
電源:単三電池8本
4レンジ対応のワイドディスプレイ表示
見やすいディスプレイで、測定対象の絶縁抵抗がはっきり分かります。最大100件のデータ記憶機能付きなので、施設の保守点検でもデータ出しが簡単です。単三電池が8本必要なので、バッテリー低下時は交換が大変かもしれません。
おすすめの商品一覧
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7
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16,327円 |
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絶縁抵抗値に注意
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電気設備技術基準58条の中で、低圧電路では使用電圧区分によって絶縁抵抗の最低値が定められています。低圧電路とは750V以下で、屋内電路であればまず当てはまると考えてください。
各最低値は300V以下の対地電圧150V以下は0.1 MΩ、300V以下の対地電圧150V超過では0.2 MΩ、300V超過で0.4 MΩです。ただし、新設時の絶縁抵抗値は1MΩ以上が望ましいとされています。
まとめ
電気回路の漏電はさまざまな事故を引き起こします。絶縁処理の劣化を検知するには絶縁抵抗計が欠かせませんから、出来るだけ良い製品を持っておきたいものです。
絶縁抵抗の測定では、対象物によって適正な定格測定電圧が異なります。対応できるレンジの絶縁抵抗計が必要なので、単レンジではなく多レンジのものを選ぶとよいでしょう。表示形式はデジタルか、アナログであればLED照明付きがおすすめです。
絶縁抵抗計は本体価格がどれも高めなので、たびたび買い替える器具ではありません。紹介してきた商品を参考に、自分の納得できる製品をぜひ探してみてください。