書道や水墨画、または製図や漫画にも使用されている墨汁(墨液)。成分によって墨の濃さが異なるため、練習用と作品用の墨汁があったり、小学生のお子様にうれしい洗濯で落とせる墨汁など種類は豊富です。開明や呉竹といったメーカーが人気ですが、どれを選んだらよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、墨汁の選び方を用途・糊剤・種類・容量からご紹介。また、おすすめの商品も練習用と作品用にわけてご紹介していますので、是非参考にしてみてくださいね。
墨汁の成分と作り方

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墨には固形墨と液体墨の2種類があり、原料はどちらも大きな違いはありません。色を出すための煤と、煤のなじみをよくするニカワなどの糊剤が原料です。その他にニカワの臭いを消すための香料も加えられます。
基本的な作り方は、ニカワを溶解して煤と混ぜ合わせ、そこに香料を加えます。練りあがった墨のかたまりを型に入れて乾燥させたものが固形墨です。液体墨である墨汁は、墨のかたまりに少しずつ水を加え、液化させることで作られます。
墨汁の糊剤に天然にかわを使用している場合、にかわの腐敗を防ぐために防腐剤が加えられます。しかし、この防腐剤は効き目が2年程度しかもちませんので、墨汁は早めに使いきりましょう。合成糊剤は5年程度もつとされています。
墨汁の選び方
墨汁を選ぶポイントは、用途・糊剤・種類・容量の4点です。用途から決めて、書きたい字にあわせて糊剤と色合いを考えていく選び方がおすすめです。
用途から選ぶ
墨汁を用途から選ぶ場合は、書道用か、それ以外の用途なのかを考えましょう。書道用墨汁は、練習用・作品用とさらに分かれます。書いたものを表具するなら作品用を選んでください。
書道練習用

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書道を習い始めたばかりの方は、書道練習用の墨汁がおすすめです。練習用の墨汁は気軽に使用できます。
墨色は灰色がかった黒であり、高価な墨汁ほど濃い色の墨色をしています。表具用として使用する場合、裏打ちすると墨がにじみ散ることがあります。そのため、展示には向きません。練習用の墨で表具にする場合は、表具を取り扱う方にそのことを伝えるとよいでしょう。
書道作品用

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書道作品用の墨汁は、紺や赤を含んだ墨色の美しさが特徴です。筆含みがよく、書道用紙に墨がしっかりなじみます。裏打ちした時の墨にじみ、散りが起こりにくいので表具用として使用するのに最適です。
また、書道作品用には、漢字用・かな用・写経用といった分類も見られます。漢字用は煤の粒子が粗く、美しい黒が出せる墨です。かな用・写経用ではのびやかな筆勢を出せるように粒子が細かい墨汁となっています。
製図・漫画用など特殊用途

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製図や漫画などの作業にも墨汁は用いられています。特殊な用途の墨汁を探す場合、書く対象は紙・布・木のどれなのか、筆記具は筆・ペン・工具のいずれであるかを確かめましょう。
おすすめの選び方は、専用の墨汁を探すことです。製図用であればドローイングゾル、漫画用なら漫画墨汁など、作業用途に合わせた製品名が付けられています。木材に使うなら木簡用、布に書くなら帛書用で探してみてください。
糊の成分から選ぶ
墨汁には墨と水を混和させるための糊剤が含まれています。糊剤は天然にかわ・合成糊剤の2種類です。
自然に優しい天然にかわ

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古くから存在する固形墨では、動物から抽出したニカワを糊剤に使用しています。その流れを汲んで、にかわを使用している墨汁は少なくありません。にかわに含まれるコラーゲンは墨をなめらかにして、筆運びをスムーズにしてくれます。
しかしながら、墨汁の糊剤として天然にかわは適していません。にかわは変形しやすい特性があり、墨汁の寿命を短くします。防腐のために含まれる塩分により乾燥しにくく、表具としてもよくありません。表具の際には紙を合成樹脂でコーティングするなどの対策が必要です。
墨散りしない合成糊剤

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天然にかわに対し、合成糊剤では合成樹脂を使用しています。合成樹脂はタンパク質を含まないため、腐敗しません。防腐のために塩分を高める必要がなく、表具に使用する場合もよいと言えます。
墨汁として最適な合成糊剤ですが、使用後に筆を洗わないと糊が固まる欠点があります。一度固まると墨の固まりが筆についたままになってしますので、使用後はしっかり水洗いをすることをおすすめします。
種類から選ぶ
墨の原料である煤は、どのような素材を燃やして採取したかによって、色の深みの違いが出ます。墨の種類は松煙墨・油煙墨・洋煙墨の3種類です。
松材の煤から作られる松煙墨

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松の幹や根を燃やして得られた煤から作られた墨です。松材の不純物が混じるため粒子が大きくなり、深みのある色が出せます。松の乾燥具合・焼成時の酸素量・焚き窯の違いにより青系から赤系まで色幅が広いのも魅力です。
筆にのせて書くと光の反射が少なく、墨の黒さが目立ちます。淡い墨汁は優しい印象の色になり、濃いものは重厚な色合いです。
植物油を燃やした煤から作る油煙墨

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油を燃やしたときに出る煤から作られた墨です。原料となる油には植物油が使われ、菜種油が最高級とされています。不純物が少ないため色の深みは松煙墨ほどになく、赤~茶系になるのが特徴です。
濃い墨汁は光をよく反射し、上品な色合いを出すことができます。薄い墨汁は赤みがつよくなるため、色の変化を楽しむために使うのもよいでしょう。
鉱物油を燃やして作る洋煙墨

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上記の松煙墨・油煙墨は古くからある製法ですが、洋煙墨は1970年頃から作られ始めました。歴史は浅いものの、墨汁の多くはこの洋煙墨で作られています。
原料は灯油・軽油や、カーボンブラック・コールタールなどの鉱物系です。松煙墨・油煙墨に比べると色の幅・艶に変化はなく、墨色そのものを出せます。芸術面での使用は適しませんが、価格が安いため、練習用・学習用に適した墨です。
特殊な色の墨汁から選ぶ
墨汁は墨色以外にも、さまざまなバリエーションが存在します。添削用や装飾用などがあるので、使い道にあわせて選びましょう。
書道の添削に適した朱液

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明るい赤またはオレンジ色であり、書道の添削・お手本書きに使われる墨汁です。原料には辰砂とよばれる硫化水銀、もしくは酸化鉄が使用されます。辰砂原料の方が価格は高いものの、色の劣化が少なくなります。
ガラスや木材への書字用である白墨汁

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白色顔料から作られた墨汁です。書道用として使われることはなく、ガラス・看板への文字書きや、木材切り出しの墨付けに使用されます。選ぶときにはきれいに拭き取れるかどうかを重視しましょう。
目立つ色を出せる金墨汁

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金墨汁は金色顔料を使用した、黄金色の輝かしい墨汁です。紺紙に金墨汁で写経をすることで、美しい作品に仕上がります。類似色に銀墨・銅墨もあるので、使い分けてみるのもおすすめです。
一定時間が経つと字が消える不思議な墨汁

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染料によって色付けされているアルカリ性の液体です。書いたときはしっかり見えるものの、液が中性に近づくと徐々に色がなくなって消えていきます。
使われるのは木材加工時の墨付け用であり、書道には向きません。なお、酸性の素材に使うと色が早く消えます。アルカリ性の素材ではなかなか消えないことがあるため注意しましょう。
容量から選ぶ
墨汁の容量を選ぶときには、すぐに無くなることがない大容量の方がお得と感じるかもしれません。しかし、墨汁は2~5年程度で劣化してしまうので、定期的に買い換えることも考慮しましょう。
練習・少量使用向きの50~100ml程度

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書道教室に通い始めたばかりの方や、書道をするのが年に数回程度の方は、50~100ml程度の容量がおすすめです。にかわ仕様の墨汁なら2年、合成糊剤でも5年程度で劣化するため、なるべく短いスパンで買い替えるようにしてください。
初めて買ったブランドの墨汁は希望通りの色でないこともあります。まずは少量を購入して、思った通りの色が出せるかを確認するとよいでしょう。
書道で使いやすい180~500ml

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書画を行う機会が月に数回ある方は、180~500mlの容量を選ぶとよいでしょう。月に2~3回書道を行う場合、180mlは3ヵ月ほど、500mlは1年程度もちます。
重量としても1kgを超えることはないため、このサイズは持ち運びやすい大きさです。書道教室に通う、仕事で使うといったケースにおすすめです。
大量使用に向く1L以上

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書道教室を主宰している、書画作品を制作している方には、1L以上の墨汁がおすすめです。頻繁に使用しても数ヵ月はもつため、墨汁の補充に煩わされなくなります。書道のイベントを開く際にも用意すると便利でしょう。
ただし、容量が増えるにつれて重量もかさみ、持ち運びは不便になります。墨汁の劣化も考慮しなければいけないため、1年程度で使いきる容量を選択しましょう。
【練習用】墨汁のおすすめ人気ランキング5選
墨汁は練習用・作品用の違いにより色合いや価格帯が異なります。ここでは書道の練習に適した墨汁を5つご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1位 開明 書液 横口 180ml

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用途:書道練習用
糊剤:合成糊剤
種類:洋煙墨
練習用墨汁のスタンダード製品
墨汁の大手メーカーである開明の製品です。原料にカーボンブラックを使い、濃い墨色を出せるようになっています。大きさも手頃のため、書道カバンに入れて持ち運びできます。
2位 光明墨汁 180cc

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用途:書道練習用
糊剤:合成糊剤
種類:油煙墨
早く乾くため練習に適している
油煙から取った煤を使用した墨汁です。色付きが良好で、書いたあとの乾きもよいため乾燥を待つ必要がありません。習字の練習では数枚書くことがあるため、乾きが早いのは嬉しいポイントです。
3位 呉竹 普及用墨滴 BA4-45 450ml

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用途:書道練習用
糊剤:合成糊剤
種類:-
たくさん練習したい方に最適な容量
文具メーカーとして有名な呉竹の墨汁です。半紙に書くと、にじみのないしっかりした黒さを出せます。容量は多めなので、書道教室だけでなく家庭内での練習用としてもピッタリでしょう。
4位 呉竹 書道液 洗って落ちる書道液 練習用 BA14-18 180ml

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用途:書道練習用
糊剤:合成糊剤
種類:-
服についても洗濯で落とせる
服にこぼしても洗濯するだけで落とせる墨汁です。乾く前に洗うことで、シミがほぼ残らずに済むでしょう。墨汁をこぼすことの多いお子さん用にもおすすめです。
深くしみこんだ箇所は、手もみ洗いをすれば目立たなくなります。ただし、絹・毛製品では落ちにくいケースがあるとのことです。色がやや薄く、表具用としては不向きです。練習用として使うことをおすすめします。
5位 墨運堂 墨の精 墨汁 180ml 12203

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用途:書道練習用
糊剤:合成糊剤
種類:-
墨専門メーカーが開発した墨汁
200年以上にわたり墨づくりを続けてきたメーカーの製品です。半紙向きに作られただけあって乾きがよく、透明感のある美しい墨色を出せます。乾いたあとに水濡れしてもにじまないのが特徴です。
【作品用】墨汁のおすすめ人気ランキング5選
こちらは作品制作用の墨汁です。価格帯は高めですが、書道大会や贈呈・販売のためにはよい墨を使いたいものです。
1位 呉竹 清書用墨滴 180ml BA10-18

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用途:書道作品用
糊剤:合成糊剤
種類:-
提出用作品に適した墨
作品を清書したいときに向いている墨汁です。とくにお子さんの書道コンクールや課題用に選ばれています。色に深みがあり、にじみにくく乾きが早いのが特徴です。
2位 呉竹 書芸呉竹 紫紺 1.8L BB1-180

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用途:書道作品用
糊剤:天然にかわ
種類:油煙墨
作品制作をする方に最適な大容量
紫紺とあるように落ち着きのある色合いを出せます。紙への浸透性がよく、半紙に使ってもシワになりません。大容量なので、複数作品を制作したい、大判の用紙に大きく書きたいときに最適です。
3位 墨運堂 作品用 玄宗 超濃墨汁 500ml 12009

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用途:書道作品用
糊剤:合成糊剤
種類:松煙墨
にじみの少ない濃さが魅力
墨運堂の作品用墨汁「玄宗」の中でも、この製品は液の濃さが特徴です。半紙のようなにじみやすい紙質でも筆にそって墨がのるため、はっきりした筆跡を描けます。濃度をうすめることで普通の濃墨、かな用の薄墨に調整することも可能です。
4位 墨運堂 特選 書法一品 500cc

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用途:書道作品用
糊剤:天然にかわ
種類:松煙墨
松煙墨により美しい墨色を出せる
松煙からとった墨を使用し、紫紺系の黒色を出すことのできる墨汁です。固形墨を摺り込むことにより、さらに色の変化を出せます。
糊剤には天然にかわを使用しており、伸びやかな筆運びで字を書けるでしょう。ただし、ニカワの欠点である使用期限の短さには注意してください。
5位 祥碩堂 最高級摺り墨 良寛 500ml

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用途:書道作品用
糊剤:天然にかわ
種類:油煙墨
にかわを使用した書き味のよい墨汁
上質なにかわと最高級香料を使用した墨汁です。原液そのままを使用すると深みのある黒が、薄めると赤みがかった茶系の黒を出せます。
天然にかわを使用しているため、開封後は2年以内に使いきってください。また、寒冷地ではゼリー状になることがあります。固まっているときは容器ごとお湯で温めましょう。
おすすめの商品一覧
製品 | 最安値 | 評価 | リンク |
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![]() 開明 書液 横口 180ml
1
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126円 |
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![]() 光明墨汁 180cc
2
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346円 |
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![]() 呉竹 普及用墨滴 BA4-45 450ml
3
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446円 |
4.44 |
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![]() 呉竹 書道液 洗って落ちる書道液 ……
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256円 |
3.72 |
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![]() 墨運堂 墨の精 墨汁 180ml 12203
5
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226円 |
4.21 |
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![]() 呉竹 清書用墨滴 180ml BA10-18
6
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268円 |
4.37 |
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![]() 呉竹 書芸呉竹 紫紺 1.8L BB1-180
7
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777円 |
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![]() 墨運堂 作品用 玄宗 超濃墨汁 500m……
8
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972円 |
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![]() 墨運堂 特選 書法一品 500cc
9
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1,209円 |
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|
![]() 祥碩堂 最高級摺り墨 良寛 500ml
10
|
3,780円 |
4 |
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服についてしまった墨汁の落とし方

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服にこぼしてしまった墨汁は、漂白剤につけて洗濯した程度では落ちません。今回は、マジックリンと固形石鹸を使う方法をご紹介します。
まず、マジックリンを水で2倍程度に薄めて、墨汁のついた箇所に浸透させます。しっかり浸透して墨色がにじむようになったら、流水に当てつつ固形石鹸で揉み洗いしましょう。洗っていくと徐々に墨のシミが薄くなります。
ただし、この方法は墨が乾く前に行うことで大きな効果が見込めます。繊維の奥に入り込んだ墨が完全に乾くと、糊剤により固まってしまうため、容易には落とせません。お子さんが服に墨をつけて帰って来ることが多いなら、洗濯で落とせる墨汁がおすすめです。
まとめ
墨汁は小学生から書道家まで、幅広い層に使われています。書道と関わっている方以外にも、年賀状・賞状・招待状の作成で使うことが多いので、正しい選び方で墨汁を手に取りましょう。
書道を習っている方・お子さん用には安価な練習用墨汁が適しています。書道作品の制作や、貫禄のある手紙を作りたい方は、作品用墨汁を選んでください。
作品用であれば、墨の種類は松煙墨または油煙墨がおすすめです。表具として使用する場合は合成糊の方がおすすめです。固形墨にも使用される天然膠であれば筆の伸びがよくなります。用途に合った満足のいく墨汁を、ぜひ見つけてみてくださいね。