木材やプラスチック、金属などを切り取り成型できるフライス盤。大きく分けると、手動タイプとCNC(コンピューター制御)タイプがあり、ご家庭でも使いやすいDIY向きなコンパクトサイズの卓上タイプのフライス盤も展開されています。
プロクソンやホーザンなどのメーカーが有名ですが、ご自身で組み立てるCNCフライス盤キット販売しているDiY CNCというメーカーも。そこで今回は、フライス盤の基礎知識や選び方と卓上タイプのフライス盤の人気商品をご紹介します。
フライス盤とは

フライス盤は、回転する刃物を対象物に当てることで切削していく工作機械で、連続的に切削する旋盤とは異なり断続的な切削となります。つけるビットでさまざまな形状に加工することができるため、幅広い作業に対応します。
ただ、フライス盤は1つの製品を作り出すのに時間がかかってしまうため、量産効果は期待できません。そのため大量生産部品よりも、多種少量の機械部品の試作品や冶具・工具などの製造などに適しています。
フライス盤の用途

木材から金属まで切削でき、さまざまな形状に加工できるため、機械の部品の加工など工場などで主に使用されています。前述でも触れましたが、コンピュータに加工したい形を登録すれば機械が自動で動き加工してくれるCNCタイプもあるため、DIYで使用されている方も多いです。
フライス盤は刃物を上部や側面から当てることができるため、加工できる形状も多岐にわたります。旋盤の場合、角状の金属などを加工するのは難しいですが、フライス盤ならば角状の対象物でも加工できます。
私たちの身近にある金属部品は、この2つの機械を組み合わせて作られています。
フライス盤の選び方
フライス盤には様々なタイプがあり、加工できる形状も変わってきます。値段だけで選んでしまうと失敗する可能性もあるため、慎重に選んでいく必要があります。
フライス盤を選ぶ際には、「制御方法」・「加工方法」・「フライス盤のテーブルの動き」などから適したタイプを絞っていくと良いでしょう。
制御方法で選ぶ
フライス盤は、その制御方法によって「手動タイプ」と「CNCタイプ」2種類に分類できます。どのタイプを選ぶかによって加工できる形状が決まってきます。
直感的な操作が可能な「手動タイプ」

手動タイプにはハンドルが付いており、それを操作しながら主軸やテーブルの位置を設定していきます。人間の手や感覚などに左右されるため、加工する人には豊富な知識と熟練した技術・感覚などが求められます。
手動タイプの場合、ハンドルの操作によって刃物の位置を決めていくため、対象物や刃物の移動範囲が直線的になります。従って、直線的で単調な形状の加工には利用できますが、曲線などが入る複雑な形状の加工は難しいです。
コンピューターで制御する「CNCタイプ」

CNCとは、「computerized numerical control(コンピュータライズド・ニューメリカル・コントロール)」の略で「コンピューター数値制御」をさします。CNCタイプの場合、全てコンピューターで制御されているため、途中で手動操作に切り替えたりすることはできません。
CNCタイプでは、対象物や工具の移動距離・速度などを数値化して動作を制御することによって、手動タイプではできない曲線などの滑らかな形状や、雑な形状などの加工もできるようになります。
CNCと似たものに「NC」がありますが、NCとは「ニューメリカル・コントロール」の略で、パンチカードという記録媒体を使ったフライス盤制御方法をさします。これはコンピューターが普及する以前に行われていた古い制御方法で、現在はコンピューターに移行しているため、NC加工=CNC加工の意味で使われます。
加工に合わせて選ぶ
「対象物にどのような加工を施したいか」によって、選ぶフライス盤のタイプも変わってきます。なぜなら、加工方法によってフライス盤の主軸(刃物を取り付ける回転する部分)や、対象物をセットするテーブルの移動範囲が異なるからです。
ここからは、対象物の形状や施したい加工方法などからフライス盤を選ぶ方法をご紹介します。
四角形状の加工に適した「立フライスタイプ」

立フライスタイプは、主軸が床に向かって垂直に取り付けられ、刃物の先端が床に向かっているフライス盤をさします。一般的にフライス盤というと立フライスタイプを指しており、現在市場に流通しているフライス盤のうち、80%ほどがこのタイプです。
「主軸頭固定型」と「主軸頭移動型」の2つに大別できます。主軸固定型は、主軸頭が固定された状態で回転し、テーブルが上下・左右に往復運動することで対象物を加工していきます。主軸移動型は、テーブルの前後左右の往復運動に加え、主軸頭が上下に移動して切削運動を行います。
主軸固定型には「ひざ形」・「ラム形」があり、主軸移動型には「ベッド形」があります。立フライスタイプは、主に四角形状対象物の平面加工に適しており、ベッド形では丸みを付けるR面加工もできます。
溝加工や切断加工に適した「横フライスタイプ」

横フライスタイプは、主軸が床と平行にセットされているフライス盤のことをさします。主に、対象物に溝を付けたい場合や側面に加工を施したいときに利用されるほか、切断加工にも利用されることがあります。
板状の長い対象物に加工を施したい場合、他のタイプでは加工ができないため横フライスタイプで行います。立フライスタイプは深穴加工(穴の深さが対象物の径の10倍以上となる加工方法)を施すことは不可能ですが、横フライスタイプであれば深穴加工が可能です。
歯車やドリルなどの加工に適した「万能フライスタイプ」

立フライスと横フライスの両方の特徴を兼備えたのが、万能フライスタイプです。立フライスが持つ四角形状素材への表面加工や、横フライスタイプが持つ側面加工がこの1台で行えます。
対象物を固定するテーブルは横フライスタイプに似ていますが、万能フライスは加えてテーブルに傾斜を加えることができます。また、メーカーによっては主軸の角度を変えられるものもありより複雑な加工を施すことができます。
縦・横・斜めから切削が行えるため、立フライスタイプや横フライスタイプでは不可能なドリル・歯車などの複雑形状の加工に適しています。
テーブルの動き方で選ぶ
テーブルがどのように動くかでフライス盤を選ぶこともできます。テーブルの動き方は大きく分けて3タイプがあり、その移動方向によって「ひざ形」・「ラム形」・「ベッド形」に分類されます。
ひざ形・ラム形は、主軸頭が固定された状態でテーブルが移動する「立フライスタイプの主軸頭固定型」に分類されます。またベッド形は、テーブルが移動している状態で主軸頭が切削運動する「立フライスタイプの主軸頭移動型」に分類されます。
ここからは、ひざ形・ラム形・ベッド形フライス盤について、詳しくご説明していきます。
主軸が固定され、テーブルがXYZ方向に動く「ひざ形」

ひざ形は、テーブルを支えるサドルの下にKnee(ニー)と呼ばれる支柱があり、これが上下(Z軸)に運動します。更に、テーブルが左右(X軸)・前後(Y軸)に運動することによって対象物を切削していきます。「ひざ形」という名前は、Knee(ひざ)に由来しています。
主軸が固定された状態でテーブルが上下に動くため、自分の目で最適な位置を確認しながらテーブルを操作していくことができます。微調整ができるので最も汎用性が高く、広く利用されています。
主軸がY方向、テーブルがXZ方向に動く「ラム形」

主軸がY軸に運動するシステムのことをラムと呼びます。「ラム形」という名前は、この主軸運動の方向に由来しています。
ラム形フライス盤とは、主軸がY軸に移動し、テーブルが前後(Z軸)・X軸に移動するものをいいます。
ひざ形は、主軸が固定されているためテーブルよりも大きな素材の加工は難しいですが、ラム形は主軸頭の位置がY軸に移動でき加工範囲が大きくなるので、テーブルより大きな素材でも加工ができます。(ただし、主軸の移動領域を超える加工はできません。)
主軸がZ方向、テーブルがXY方向に動く「ベッド形」

ベッド形は、サドルの下にベッドと呼ばれる台が設置されており、テーブルがY軸・X軸に移動するほか、主軸はZ軸に移動できます。「ベッド形」とは、このテーブルとサドルを支えているベッドに由来します。
ひざ形やラム形と比較して剛性(変形する度合い)が少ないため、加工物の1つ1つの仕上がりに差がなく、大量生産に向いています。
フライス盤のおすすめ人気ランキング10選
ここからは、DIYや趣味でも利用できるコンパクトタイプのフライス盤を、人気ランキング形式でご紹介していきたいと思います。
ミニフライス盤であっても、本格的に金属加工ができるものもあります。フライス盤の選び方から自分が求めているタイプが決まったら、今度は人気ランキングを参考に商品を絞っていきましょう。
1位 DIY CNCルーターキット+ 2500mWレーザー CNC2418

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重量:8kg
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:X軸240mm/Y軸180mm
フライス加工・レーザー加工初心者におすすめ!
木材やプラスチックなど金属以外の素材に加工を施せるミニCNCフライス盤です。2500Wのレーザーヘッドを搭載しているので、レーザー彫刻も楽しめます。特に、加工作業の好きな方やレーザー彫刻に興味のある方におすすめです。
制御ソフトウェアはGRBLソフトウェアで、回転数を制御しながら作業が行えます。このソフトウェアはWindows OSに対応しており、Windows XP・Windows 8・Windows
10で利用できます。
このCNC2418モデルは、金属へのフライス加工やレーザー加工は行えないため、金属加工(アルミニウムや銅などの硬度の低い金属への加工)を希望する場合には、金属加工ができるCNC2417モデルを選びましょう。
2位 DIY CNCルータキット CNC1208

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重量:7㎏
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:X軸126mm/Y軸88mm
コンパクトながらパワフルなCNCフライス盤
木材・プラスチック・アクリルなどのほか、アルミニウムや銅などの柔らかい金属も加工できる立フライスタイプの卓上フライス盤です。ボディはレッドでデザイン性も高いフライス盤です。
家庭用として設計されているため剛性の高いものは難しいですが、フライス加工の勉強や研究のために利用するにはおすすめです。また、DIYをする方にも1台あると役立つでしょう。
主軸の回転数を制御するGRBLソフトウェア搭載なので、加工もしやすいです。中国製なため品質は若干低下しますが、この価格で金属加工ができる家庭用CNCフライス盤は、このほかにほとんどありません。
3位 東洋アソシエイツ Mr.Meister LittleMilling1 66400

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重量:40.0kg
制御方法:手動
加工方法:万能フライス
テーブルの動き:X軸180mm/Y軸130mm
自宅で本格的フライス加工ができる!
卓上フライス盤の多くは、軽量に設計されているため加工品の剛性は低くなりがちです。しかし、このLittleMilling1は万能フライスタイプで重量もあるため、本格的フライス加工が可能となります。また、コンパクトに設計されているため場所を取りません。
加工がじっくりと施せるミーリングテーブルを採用し、主軸部分にはテーパースピンドルを装着されています。これにより、精度の高いフライス加工や穴あけ加工などを施すことができます。木材・プラスチックへの加工はもちろん、金属への加工もOKです。
主軸がついたヘッド部分を支えるコラムごと傾斜(-45°~+45°)するので、立フライスタイプなどでは加工できない精密加工や、複雑なデザインの加工も可能となっています。
4位 DIY CNCルーターキット CNC3018-PRO

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重量:8kg
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:Y軸
20分で完成する家庭用CNCフライス盤
従来のDIY CNCルータキットの改良盤で、デザインも新しくなっています。より安定感を持たせるため構造面を強化したほか、グローバル制御ソフトウェアを搭載して扱いやすくなっています。加工や彫刻に興味がある方や、芸術家の方などにおすすめです。
スピーディーな組み立てが行えるよう改善されており、コアコンポーネント(ソフトウェアの構成部分)は組み立て済みで届きます。実際に組み立てると約20分で完成できます。
フライス加工以外に彫刻も可能ですが、このフライス盤が加工できる素材はプラスチック・木材・アクリル・PVC・PCBなどで、金属は加工できません。
5位 RATTMMOTOR CNCルータキット CNC 2418

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重量:6.95kg
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:-
木材・プラスチック素材用で家庭用にピッタリ
こちらは、プラスチック、木材、アクリル、PVC、PCBと幅広い素材を加工できるCNC卓上フライス盤です。必要な部品は全て揃っており「組み立てキット」として自宅に届きますが、簡単な説明書しかないため、機械に関する知識がある方におすすめします。
6位 RATTMMOTOR CNCルータキット CNC3018

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重量:7.33kg
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:前X軸70mm/後40mm
フライス加工の他にレーザー彫刻も可能
このフライス盤は、回転数を制御するグローバル制御システムを搭載したCNCタイプです。フライス加工のほか、彫刻ナイフをセットすることによってレーザー彫刻も可能となります。
レーザー加工が施せる素材は、木材・アクリル・PVC(ポリ塩化ビニール)・PCB(ポリ塩化ビフェニル)であり、金属へは施せないので注意が必要です。
組み立てタイプで自作する必要がありますが、詳しい説明書は付属していません。そのため、フライス盤の操作の他に組み立て・ソフトウェア・配線などに詳しい方でないとおすすめできません。
7位 プロクソン フライスマシン No.27000

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重量:13.9kg
制御方法:手動
加工方法:万能フライス
テーブルの動き:左右70mm/後方40mm
面取り・穴あけなどにも使える
テーブルは前後・左右に移動するほか、スタンド部分(主軸がセットされた部分)は上下にも移動します。右方向へ90度まで傾斜する万能タイプなので、より複雑な加工も可能となります。また、フライス加工以外に面取り・穴あけ加工などが行える多機能性も備えています。
家庭用なので、業務用の本格的フライス盤と比較すると加工品の剛性や精度は低いです。従って、加工品の精度や剛性の高さにこだわらない方にはおすすめできますが、品質にこだわる方はワンランク上のものを選んだほうが良いでしょう。
8位 DIY CNCルータキット CNC2417

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重量:7㎏
制御方法:CNCタイプ
加工方法:-
テーブルの動き:Y軸
安価なCNCタイプを求めている方におすすめ
CNCタイプはコンピューター制御なので便利ですが、高額な点がデメリットです。このCNCフライス盤は、自動制御でありながら2万円代という超低価格となっています。ただし、完成品ではなく部品として届くため自分で組み立てる必要があります。
中国製であり説明書やCNCソフトウェアが付属していないため、CNCの操作だけでなく組み立てや配線、ソフトウェアなどに熟知していないとおすすめできません。
9位 プロクソン マイクロ・フライステーブル MF70 No.27120

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重量:7㎏
制御方法:手動
加工方法:立フライス
テーブルの動き:Y軸23mm/X軸66mm
万能フライステーブルが省スペースを実現
テーブルがX軸・Y軸に移動できる立フライスタイプです。スライド式の目盛りがテーブルに付いているので、細かい加工にも適しています。スピードコントローラー付きで、主軸の回転数を本体横のつまみで調整できます。
テーブルはX軸・Y軸に移動できるので便利ですが、移動範囲はX軸が66mm、Y軸が23mmと狭く、大きな素材の加工は難しいです。長時間利用すると、モーターから煙が出ることもあるので注意が必要です。
10位 DIY CNCルータキット+2500mWレーザー CNC2417

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重量:7.5kg
制御方法:CNC
加工方法:-
テーブルの動き:X軸240mm/Y軸170mm
2500Wレーザー搭載のCNC卓上フライス盤
家庭用の卓上CNCフライス盤で、木材・プラスチックなどのほかに柔らかい金属(アルミや銅など)の加工も可能です。レーザーヘッドを搭載しているので、金属以外の素材へレーザー彫刻を施せます。
このフライス盤は、完成品としてではなく部品として届くため、全て自分で組み立てる必要があります。機械に疎い方は組み立てられない可能性があるため、機械に詳しい方におすすめします。
おすすめの商品一覧
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21,980円 |
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7
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46,958円 |
3.88 |
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9
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26,593円 |
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10
|
35,280円 |
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まとめ
いかがでしたでしょうか?市場に出回っているフライス盤の多くは、汎用性が高い「手動タイプのひざ形フライス盤」ですが、時代が進み、現在では自宅でも卓上タイプのCNCフライス盤が使用できるようになりました。
人気ランキングでは組み立て式のCNCタイプが多くランクインしていますが、手動タイプは完成品として販売されています。フライス盤は、選び方と共に機械への知識も含めて決めていくと良いでしょう。